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2021.02.22
日頃より、全院協にご支援をいただきありがとうございます。
2020 年度議長の梅垣です。この度、全院協ニュース 2 60 号を発行させていただくことになりました。まずは、要請行動の詳しい結果をお知らせするのが遅くなってしまったことを皆さんにお詫びいたします。
本号は、昨年 11 月に行った国会議員及び政党、省庁への要請行動の結果についてお伝えする内容です。詳しくは本文をお読みいただければと思いますが、今回の要請はコロナ禍が院生に与える研究・生活への影響の大きさが、これまでの大学政策のゆがみから生じていることが明らかになるなかで行われました。もちろんコロナ禍は現在進行形で日本社会全体に大きな打撃を与えるものですが、そもそも大学院生の生活の基盤がこれほどまでに不安定であること自体についてもこの機会に問われなおす必要があります。とかく、大学院生が安心して研究する環境について議論する際、そ のことがいわゆる科学技術における競争力、ひいては日本社会がどう「 GDP を増やすか」「勝ち残るか」ということに関連付けて言及されがちです。
誰かが安心して生活できるような環境を求めるとき、そのことを近視眼的な意味で「どう役に立つのか」と問いを立ててその環境を正当化する論理は、例えば食物がなくなるなどのストレスによって自分の足を食べてしまうタコのように、大学院生の生活の根拠となる基盤に虫食いのように穴をあけてしまうように思います。役に立つか立たないかという議論は、そのことが誰かの生存を脅かすかもしれない前提に おいては不適切です。
今後も、誰かの平和的生存に果たす役割という意味では、社会のなかで高等教育の重みが増すことはあっても減じることはないでしょう。そうした高等教育の場を維持、発展させるエコシステムのなかで不可欠の機関である大学院も、いっそう重要性を増してゆくことになります。加えて、そうした場にアクセスする機会を保障することを目指すときには、教育を受ける権利に立脚しなければなりません。社会がよりよく変化するということそのものが、民主主義社会が教育を基本的人権として保障している前提であるとするならば、大学院生 こそ、「社会は変わる」という信念とともにその運動を続けていく必要があるでしょう。日本の高等教育のありようがいかに困難なものであっても、むしろそれゆえに私たちは大学院生の当事者としての運動を広げる必要があると感じます。
困難な状況のなかで、運動の行く末は決して明瞭ではありませんが、2021 年度以降も、皆さんとともに運動を発展させていく所存です。全院協に今後ともご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
2020年度全国大学院生協議会議長 梅垣