2020.04.17
4月15日、全院協は「国民のための奨学金制度の拡充をめざし、無償教育をすすめる会」(以下「奨学金の会」)の一員として、憲法26条に規定された学習権を新型コロナウィルスの感染拡大に伴う否定的影響から守るため、衆議院文教科学委員会および参議院文部科学委員会に属する与野党国会議員に対し緊急の要請行動を実施しました。要請全体は、4月10日の文科省要請と同様に初等・中等教育から大学院生を含む高等教育までを幅広く包括する内容でしたが、全院協としては大学の閉鎖等ともなう研究・経済生活への影響を説明し、大学院生も含めた給付・支援の必要を主張しました。
まず、そもそも現状の混乱を招いている根本的な原因は、日本の学費が、憲法に定められた学習権や高等教育無償化に向けた国際的な流れに反する形で不当に高められてきたことにあります。それゆえ学費の延納・分納、減免といった措置が必要になっています。また大学院生に固有の問題としては、修学支援新制度が制度上、学部生と大学院生とを別々の取り扱いにしたため、給付的措置において差別が生じています。ほかにも大学や図書館が閉鎖になったため、文理の別を問わず研究が続けられないといった問題や、通信環境の整備が個人の責任に帰されているといった状況があります。現状、個々に程度の違いはあれ、学生全体が困っているという状況にあって、なんら政治的な支援がなされないというのは無策としかいいようがありません。
直接面談をしていただいた議員としては、日本共産党の畑野君枝衆議院議員に大学院生の研究・経済生活の実態に即して、なぜ給付的措置が必要なのかを聴いていただきました(冒頭写真)。日本学生支援機構が隔年で実施している学生生活調査によれば、大学院博士後期課程在籍者では日々の生活に掛かる費用は最低でも月15万円程度になるとのことです。TA・RAを含むアルバイト収入の減少が見込まれるなか、大学院生の生活不安は募るばかりです。畑野議員は、こうした実情を真摯に受け止めてくださり「こういった非常時にこそ、研究者の知見が重要な意味を持ってくる。にもかかわらず今の政府はそういった人々の生活を蔑ろにしていると思います」と述べ、「政治家も官僚もてんてこ舞いで、現場の声を掬い取ることができていません。皆さんひとり一人が声をあげてくれることで、政策にも反映することができます」と力強く応えてくださいました。
畑野議員の他にも、衆議院文教科学委員会および参議院文部科学委員会に属する与野党国会議員60名に要請を行いました。多くが秘書の方のご対応でしたが、しげしげと要請項目を見つめ、我々の主張に耳を傾けている印象でした。政治的な主張をすることを「政権への非難」として忌避する意見もありますが、議員や官僚も当事者の声を欲しています。全院協としては、「奨学金の会」をはじめ関係団体との連携を一層強化し、大学院生への支援策が充実するよう関係省庁及び国会議員等に働きかけを続ける方針です。
衆議院議員各位
2020年4月15日
国民のための奨学金制度の拡充をめざし
無償教育をすすめる会 (奨学金の会)
会長 三輪 定宣(千葉大学名誉教授)
新型コロナウイルスの感染が深刻化・重大化するもとで、政府・自治体はイベント自粛や一斉休校、外出自粛などの要請を行っています。その結果、様々な経済活動に影響が現れ、事業の休業や廃業、それに伴う解雇・雇い止めや内定取り消しなどの報告が出てきています。
今回の経済への影響の特徴は、感染収束の時期が見通せないまま、個人の活動が制約されることで、自助努力での将来設計が困難な状況が生まれることです。
こうした状況下で憲法第26条の学習権を保障するためには、感染から児童・生徒・学生の命を守る環境・衛生対策とともに、家計急変の状況に対応した経済的支援策を早急に行うことが重要です。特に新学期を迎え、進級・進学・就職活動など経済的負担がかかる今こそ、抜本的な直接支援が求められています。
つまり、直接・間接の学校納付金の減免や、奨学金については将来に負担を転嫁する貸与(ローン)や返還猶予という形ではなく、給付や返還免除という救済が必要になっています。
以上の観点から、下記の点を緊急に実施するため、必要な予算措置等を速やかに行うよう要請します。
新型コロナウイルス感染症の影響により、家計が急変した子どもたちの学資を負担している者に対して、下記の対応をおこなうよう指導を徹底すること。
新型コロナウイルス感染症の影響により家計やアルバイト等の収入が急変した国公立及び私立の学生等に対して、下記の対応を早急に行うこと。
新型コロナウイルス感染症の影響により家計が急変した返還者に対して、下記の対応を早急に行うこと。
以上