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2013.07.23
全国大学院生協議会(以下、全院協)の議長を務めております、一橋大学の内海咲と申します。現在、博士課程に在籍し、研究と全院協活動に励んでいます。全院協の取り組みとその最近の成果を紹介し、議長からの挨拶に代えさせていただきたいと思います。
全院協は、1959年に結成された国公私立大学の院生自治会・院生協議会の全国組織です。大学院生の声に基づき、個別大学では解決できない様々な問題に共同して取り組み、大学院生の生活・研究条件の向上を目指すことを目的としております。この目的を果たすために、全院協が行なっている活動は、大きく分けて二つあります。
一つ目は、大学院生の置かれた実態を把握する取り組みです。この活動は、参加している大学院生が集う理事校会議での経験交流や毎年実施している「大学院生の経済実態に関するアンケート調査」などを通して行っています。昨年度のアンケート調査では、日本全国の国公私立大学計38 大学から755に及ぶ回答が寄せられました。回答から、将来の就職状況を不安に感じている院生が56.6%にのぼること、経済上の不安を抱える院生も50.7%、収入の不足が研究に影響を与えていると答えた人の割合が 61.3%に達していることが明らかになりました。
二つ目は、アンケート調査などを通して明らかになった実態を基に政策提言を練り上げ、中央省庁、各政党、学生支援機構へ要請を行うことです。この要請行動を通して、大学院生の生活・研究条件の向上を実現しようと試みています。これまでの要請の成果として、文科省による財務省への予算増額要求(2007年度以降)、給付制奨学金の予算要求、授業料減免枠の拡大などがあります。なかでも外務大臣による国際人権規約第 13 条 2 項(c)留保撤回は近年の大きな成果として挙げられます。このような地道な活動によって、NHK「クローズアップ現代」の取材を受けるなど、マスコミからも注目され始めています。
以上の二つの取り組みとともに、全院協では全院協活動の参加を広げる取り組みも精力的に行っています。具体的には、権利停止校やオブザーバー校に加盟を呼びかけること、全院協活動への参加者・理解者を増やすことです。全院協の加盟校は1981年の40大学をピークに減少、組織の縮小が進んでいました。しかし、加盟校拡大の取り組みによって、2011年5月には中央大学大学院経済学研究科院生協議会が再加盟を果たし、2012年6月には立命館大学院生協議会連合会が再加盟しました。多くの大学で院生自治会・院生協議会の活動が困難となっていく中で、全院協運動を発展させると同時に、各大学での担い手を増やし取り組みを広げていくことが今後の課題となっています。2013年度は、特に加盟校との信頼関係を構築に努めることを課題としています。
今年度の事務局は、一橋大学、京都大学、東京大学、立教大学、総合研究大学院大学の大学院生7名で構成されています。全国の大学院生の研究条件を維持・向上させるため、今年度も全国の大学院生と力を併せて取り組んでいきたいです。一年間、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
全国大学院生協議会議長 内海咲
“リケジョ”という言葉をご存知だろうか。リケジョは理系女子の略であり、私もその一員である。私は高校や大学では理系(物理化学系)を選択したため周りに女子は少なかった(生物系の学科は比較的女性が多い)。クラスで女子が数人の状態が当たり前であり、男性も女性も同様に能力があるはずなのに、なぜこのようなことがおこっているのか、もっと女性がどの分野でも活躍でき、過ごしやすい環境をつくりたいとずっと感じている。
一昔前は女性院生や研究者は圧倒的に少なく、出産や育児、昇進などで大変苦労したという話を聞く。現在でもその状況は大きく変わったとは言い切れないが、男女共同参画基本法などが制定され、少しずつではあるが女性が家庭と仕事を両立することができるようになってきている。しかし、未だに管理職や意思決定機関における女性の割合は低い。
全院協でも女性が議長をつとめるようになったのはつい最近であり、今年度の議長を含めてたった 3 人だそうだ。ここ数年間女性が全院協議長をつとめたということは、全院協にとって重要な発展であると思う。単に担い手がいなかっただけかもしれないが、女性であっても議長をつとめることができる環境が全院協にも整えられてきたのだろう。それは仕事の負担の軽減だけでなく、担い手の意識も変わりつつあるのではないかと思う。
しかしながら、昨年度事務局員には女性がおらず、事務局会議で私は紅一点であった。内閣府男女共同参画局の今年度のキャッチフレーズは「紅一点じゃ、足りない」である。まさしく私の気持ちを反映しており、非常に共感できる。女性が全くいないという環境から考えれば、紅一点になっただけでも前進かもしれない。しかし、それだけでは不十分なのだ。私自身も女性ならではの悩みや愚痴を気軽に言い合える仲間がいなかったのが寂しかったし、本当は女性院生の抱える問題にも取り組んでいきたかったが、その余裕はなかったのが大変残念である。
そういう中でも私が議長をやることを決断し、1年間なんとかつとめることができたのは、先輩女性研究者たちの活躍があったからである。女性が院生、ポスドク、教授、管理職など、それぞれの立場で活躍することが次の世代にとってのロールモデルとなり、周りを勇気づけることになる。最初の一歩を踏み出し道を作っていくことは大変な努力が必要であるが、自分には多くの仲間がいることを信じて、私自身もロールモデルとなれるよう今後も進んでいきたい。
2012年度議長 奥村美紗子